The Innovation MAZEで歴代の幹部が失敗し続けた経営改革を成功させる。〜マルチレイヤーイノベーション編〜
企業が自社の独自性を強めていくためには、「高度専門性」を高める必要がある。なので、大企業の組織構造は専門家組織になる。しかしながら、高度専門性が高まれば高まるほど、各組織がサイロ化し外の変化に対して柔軟に対応できなくなる。という問題が起こる。
その際たる具体例が官僚形組織である。官僚形組織を提唱したのはマックス・ウエーバー。官僚形組織とは権威という支配により安定化を図る。命令権力と服従義務による支配で組織を管理統率していく組織だ。
その特徴は①標準化 ②階層性 ③没個人の3つに集約され、すべての業務は定型化、標準化され指揮命令系統は階層化。命令側も服従側も非人間的な秩序に服従することを強いられる。
そして、これが行き過ぎると、官僚形組織の逆機能が起こり①訓練された無能が育成され、②手続きの目的化が起こり、③顧客の満足より上司や幹部の満足となっていく。
日本の大企業はもれなくこの重篤な病に侵されているのだが、経営幹部、管理職、社員そのものがこのシステムを構成する要素の一つになっているので、自らその問題に気づき、改革していくことはほぼ不可能だと言われている。この問題を解決すべく2010年にU理論、2018年にはティール組織が注目を集めた。しかしながら、志あるものが大企業の中でU理論だ、ティール組織だと改革の旗を掲げても官僚形組織の自己防衛機能に阻まれていることは想像に優しい。
経営改革とは例えば、①経営理念の見直し、②ドメインの見直し、③事業改革業務改革、④新規事業開発、⑤人材育成、⑥システム公開と分類される。
自分の権限内で改革を期待されても、カイゼンに留まり、重箱の隅を突く過剰なマイクロマネージメントに陥るのが常だ。なぜならば、上記の経営改革の実態は、確立された手法があるわけでもなく、外部コンサルによるものか、社内の独自の手法であることが殆どで、議論と資料と報告が成果物になってしまう。実態が伴っていることが確認できないという問題がある。PDCAのCにまたmtgと膨大な報告資料。その資料の修正で忙殺される。本末転倒な営みがあっちこっちに散在してないだろうか?
ところがだ、上記の経営改革を一気に同時並行で進めることができて、かつPDCAのCheckに時間を取られず、あれやこれやと資料作成と報告にいちいち時間を取られなくても、Actionになり、人材が育成される方法があるとしたらどうだろうか?
私はその方法を見つけ実践し、上手くいっている。書籍「イノベーションの迷路(原著THE INNOVTION MAZE)」は組織の力学をHACKし、然るべきルートを歩むことを教えてくれた。BMCはビジネスモデル全体を全体最適に向かわせるための鳥の目を与えてくれた。VPCは関係者のPainGainを洞察する虫の目を与えてくれた。
現在、私のもとには、売上○兆円の格上のNTTグループ企業や日本を代表する一部上場企業のメーカから、Salesforceを使った全社経営改革を「どうやったのか?」
「なぜうまく行ったのか?」という問合せや講演依頼が入っている。
Salesforceの全社導入による全社経営改革の構想が明確になったのは、2018年 アレックス・オスタワルダー氏とイブ・ピニュール氏のビジネスモデル・マスターコースで紹介された5つのイノベーションだ。
①オペレーションイノベーション
②マーケティング・イノベーション
③R&D・イノベーション
④ビジネスモデル・イノベーション
⑤組織とマネージメントのイノベーション
5つのレイヤーの改革を同時にやってのける。あなたにイメージできるだろうか?そして、多くのイノベーターにとっての障壁。地雷、壁、トラップなどがその道を阻む。構想から計画、体制整備、実施、管理そして、運用・管理これを経営幹部、取締役全員の同意を取らなければならない。
言ってしまっては申し訳ないが、新規事業開発の投資判断の難易度とは次元が違う。なぜなら、現場の抵抗は絶対。役員の大半は反対派。これを突破する。DXなんて次元の話ではなく、組織そのものを変容させることである。それを旧態依然、超官僚的企業文化の技術志向主義、経営幹部は研究所OB。誰もが不可能だと思い、想像もしない。改革派の役員が何代にも渡って繰り返し失敗してきた経営改革だ。
しかし、起案から僅か半年で取締役方々の稟議を通し、コロナ禍による営業活動の制約があっても
マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスを開始した。
– 代理店管理、顧客管理によりEXCELのサイロ郡を排除。11名の要員を2人にそしてBPOした。
– ERPとの連携。管理会計の見直し
– PFビジネスの開始
– など、サイロ化されて分断されていた全組織が一つのプラットフォームで情報共有し、上ばかり見ていた社員は、お客様を観、お客様のジャーニーがスムーズに進むように組織間連携するようになった。
起案から半年で導入。コロナ禍に見舞われたが、全社は新しい仕事の仕方へとシフトした。
この改革が成功、推進されている理由は、私に四大コンサル級の知識やスキルがあったから出来たわけじゃない。強烈な権力があったわけでもない。人望がありまくって、社内にファンがたくさんいたわけでもない。
書籍「イノベーションの迷路」が教えてくれた「タイミング」である。
次回は、タイミングについて共有していく。