構想力を鍛える
最近、「アート思考とはなにか」について考える機会が増えました。Clubhouseで話したり、弊社(ブルームコンセプト)のコンテンツの中にもあるので、代表がYou Tubeで話したり。
少し前からビジネス界隈で「アート思考」と言われ始め、BMIAでも、昨年のビジネスモデルオリンピア2020では「アートがひらくイノベーション」というテーマで、アートに焦点を当てて開催しました。
あれから1年。ますます「アート思考」は市民権を得てきたように感じます。(日経新聞でも、アート思考のプログラムで座禅を組む、なんてことが紹介されています。2021年1月27日記事)
「デザイン思考」と「アート思考」の違い
よく聞かれますし、私自身も明確にしたかった、この2つの違い。デザイン思考は「人間中心主義」であり、「試行錯誤」が特徴だとすると、アート思考はなんでしょうか。
「今までにないものを生み出す」ことと、「そこには構想がある」といえるのではないか(小山談)、というのが今のところの見解です。少し長いのですが、You Tubeに音声をアップしてますので、もしよろしければお聴きになってください。
インプロ(即興劇)は、まさにアート思考を体現している!?
この話を聞いていて思ったのですよ。「それって、インプロじゃない……?」
インプロ(即興劇)は、打合せも台本もないところで、その場でお客さんに「行ってみたい場所」とか「一度は経験してみたい職業」など、単語をもらって、そこからシーンを紡いでいきます。
この作業は、まさに「今までにないものを生み出」していく試みですし、そこに「構想」がなければストーリーが成り立ちません。
この「構想」はどうつくられていくんでしょうか。
役者全員が、単語をもらった瞬間に、それぞれ自分の頭の中にイメージが湧いて、見えている風景があります。(なんにも浮かばないときもあります。)それをいちいち言葉にして説明して段取りして、「わたし、こういうこと考えていて、お母さん役でこうやって出るから、あなた子供役やってよ」みたいなこと言わずに、舞台の上での演技を始めるんですね。
たとえば、だれかが、自分のイメージとはまったくかけ離れた、え?なんでそれ? みたいな役で出ても、それを受け入れて、乗っかるように、そのシーンを続けられるような役で、セリフで出ていく。登場人物だけとは限りません。「あぁ、海だー」って、その人物が言っていたら、「ざざーん…!」と波の音を袖から言ったり、「キィーキィー」と鳴きながら飛ぶかもめとして舞台を横切ったりします。
このとき、この物語はこうしてああしてこんなふうになるといいな、とあまり考えてません。というか、考えられませんし、考えてもあまり意味がないんですよね。どうなるかわからないから。海があるならかもめが飛んでるだろうな〜くらいな着想で、瞬間的に、思いついた、と同時に身体が動く、という感じです。インスピレーションだけで。
エゴのない主観
このことがまさに、自主的だし自発的だし主観的、ですよね。
なんだけど、エゴじゃないというところがすごく大事なポイントだと思っています。
ここでこんな役で出て、こうやって言ったらウケるかな、とか。これ、エゴですもんね。「もうほかの役者はみんな舞台に出てるのに、自分だけ出てない。何の役でもいいから早く出なくちゃ」と焦るのも、「あ、こういうのおもしろそう。でも、みんなの想定と違ってたら台無しになっちゃう。どうしよう」と怖がって出ないのもエゴ。
「いま舞台ではどんなシーンが描かれていて何がつくられようとしているのか」を役者たちのセリフや、ふるまい、観客の反応、それらすべてから影響されてつくられる〈場〉を感じ取って、それをおもしろがって、イエスアンドしていきます。
お互いにその〈場〉にイエスアンドし続けていくと、観客も含めた会場全体が、あるとき「あぁ、こういう物語なんだ」という構想が、立ち上ってくる。(大目的、と私たちは呼んでいます。)劇中の役として、「だよね? 大目的、これだね?」と確認しながら、どんどん構想が生まれてくる。
これって、まさに、アート思考ではなかろうか!
こうやって、書くのは簡単なんです。こんなふうにできたらサイコーだ! という理想を書いています。頭ではそう理解していて、そうしようと思うのですけど、これがやってみると本当に難しいし、なんでやねん!と思わず大阪弁でツッコみたくなるようなことをしちゃうんです。最後の最後まで構想が噛み合わずに終わることもしばしば。またそこがおもしろかったりするんですけれど。
というわけで、難しすぎておもしろすぎてやめられないのがインプロ。これがアート思考を磨くことにもなるのなら、喜んでリスクに飛び込まなくちゃ!