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EPIC Gamesに学ぶGAFAとの戦い方

みなさんは、Appleに真っ向から戦いを挑んでいるEPIC Gamesという会社をご存知でしょうか?

幕を開けたアップルvs「フォートナイト」開発元の“手数料訴訟”は、ある単純な「問い」で勝負が決まる
WIRED 2021.05.06
https://wired.jp/2021/05/06/epic-apple-lawsuit-one-legal-question/

世界的なヒットとなっているFORTNITEというゲームを制作した企業です。
FORTNITEは全世界で3.5億人の登録ユーザーがいると言われ、その売り上げは、2019年のデータで1800億円になり世界で最も収益を生んでいるTPSというジャンルのゲームです。

もっとも人気のコンテンツはネット上でつながったユーザー100人のユーザーが一つの島に降り立ち最後の一人になるまで生き残れたら勝利という『バトルロイヤル』です。非常によくできているので是非やってみて頂く事をお勧めします。なんと無料で遊べてしまいます。

このFORTNITEは、最近発売されたBMIAシニアアドバイザー アレックスオスターワルダー、イブピニョール著『Invincible Company』の利益方程式の破壊・補填型のビジネスモデルとして紹介されています。この型はフェスティバルで多用され入場料は無料に設定して、会場内での様々なものを購入してもらう事で収入を得ていくビジネスモデルです。

FORTNITEは、ソフトそのものやプレーは無料で遊ぶことが出来ます。プレーヤーはお好みのスキン(プレーヤーの見た目)やアイテム(ツルハシやバックパック)、エモート(ダンスやパフォーマンス)が欲しい場合お金を出して購入します。この手のゲームでしばしば問題になるゲームを有利に進めるために必要なアイテムは存在せず全て、見た目のみが変わるものとなります。

よって無料でも課金してもプレーヤーの基本的な強さは変わりません。

にもかかわらずこれだけの収益を上げられる秘密はなんでしょうか。

FORTNITEのビジネスモデルキャンバスとそこに働く自己強化ループ

※ビジネスモデルキャンバスと自己強化ループについて詳しく知りたい場合は上のリンク先を参照ください。

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ユーザー数増とユーザーコミュニケーション増の自己強化ループが絶妙に作用しあう構造
CS
は、第一にゲーマーのマスマーケットとなります。そこへPCやスイッチ、PS4などクロスプラットフォームを通じて軽快な動きや、爽快感といったゲーム体験及びユーザー同士のコミュニケーションといったVPを提供します。広く集めたユーザーの一部へ魅力的なコンテンツを配信しゲーム内課金により収益を上げそれを開発費に回しVPを強化しさらなるユーザーの獲得を行います。

またCHのクロスプラットフォームや基本無料の入り口は、親子でゲームを楽しむなど一部のマニアだけではなく幅広い年齢層をユーザー(CS)に引き込む事を可能としています。ユーザーは、リアルでつながりのある友達やFORTNITE上で知り合った友達とコミュニケーションを取ったり、この世界へ没入し、よりこのゲームを楽しむ為に自分のキャラクターの見た目や道具の見た目を変えるアイテムを購入します。

ここだけの収益でこれだけの大きな売り上げを上げていますので、このVPがいかに強力かがわかります。VPは雰囲気なので真にそれを知るためには体験してみる必要ありです。

そういった収益により、KRである開発リソースを強化しゲーム性能を上げてVPを強化していきます。またそれにより増えたユーザー(CS)は、YouTubeのゲーム配信者(CS)にとっては新たな収益機会(VP)となり、ゲーム配信者が、ゲームの様子やストーリーの考察をたくさん出していくことでゲームの認知がさらに上がりユーザーが増えていきます。

コンテンツ充実の自己強化ループにとそれにより生じる生じるバランスループ
また、毎日発売されるスキンがアップデートされる、1週間ごとにマイナーアップデートがされる、約3か月ごとにメジャーアップデートがされるといったと膨大なコンテンツ開発に投資することが出来ます。その事により、さらにユーザーおよびゲーム配信者に提供するVPが強化されていきます。

もちろんこういったバランスループも生まれます。ここまでの収益があればリソースへの投資で回避は可能と思われます。
『フォートナイト』開発スタッフ、週70時間労働を強いられていたことが調査で判明
https://jp.ign.com/fortnite/35071/news/70

今話題のAppleとの訴訟は、何が争点なのか

Appleとの訴訟は、ゲーム内課金をAppleを通さずゲーム内の独自通貨で行った事で、iOSへの配信を停止されたことによるものです。EPICGames側は、こういったゲーム内課金に対しての30%の手数料は反トラスト法で規制されるべきとして争われています。

1984年のAppleのCMをパロディーにしたこのCMが話題となっています。

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​iOS​でのユーザーを失うリスクを背負いながらも果敢に戦いを挑んでいるわけですが、EPICGames全体のビジネスモデルの進化を見ていくと無謀な戦いを挑んでいるわけではないことがわかります。

EPICGamesが目指す進化 
ゲーム配信+ゲーム開発双方向プラットフォーム

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​FORTNITEのヒットは、ゲーム開発エンジンUnreal Engineの強化を行う事にもつながります。ゲームを開発するためのものですが、今最も優れたもののひとつであると言われています。あのスクエア・エニックスもUnrialEngineを使っているのだそうです。こちらは売れたらもらうというライセンス費用がマネタイズポイントになっています。

さらにCGなどが多用される最近の映画やTVの制作にも使われ新たなキャッシュポイントとなり始めています。

既にゲームや映像の制作、開発プラットフォームとなっています。

さらなる進化としてゲーム自体の開発もEPICでやっていまるならそのゲームの配信もやってしまえば良いとなります。

App storeに頼らなく良いように自身がプラットフォーム化してしまうという戦略です。

ゲーム配信プラットフォームには、steamという大きな競合があったり、Googleも参入を表明していたりと一筋縄ではいかなそうですが、ゲーム開発プラットフォームとゲーム配信プラットフォーム両方を持つというプラットフォームの独自性を強化する事がGAFAのような巨大な企業に対して、常套手段となるのかもしれません。

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