2つのRを大事にすると……
「日本でいちばん大切にしたい会社」の研究で著名な坂本光司先生と、年輪経営でこちらも著名な伊那食品工業の井上社長が登壇された講演会を拝聴しました。
知人が法政大学の坂本研究室に所属しており、以前からチャンスを伺っておりましたがようやく生の「坂本節」と共に、坂本研究室とパソナさんの200社50,000人を対象にした「良い会社サーベイ」についてのお話を伺いました(1)
年輪経営の本質も複数該当するのでしょうが、好業績な会社は「人を幸せにする経営」であり、それは5人の人が対象であるとのことでした。
- 社員とその家族
- 協力会社の社員とその家族
- 現在の顧客と未来の顧客
- 地域住民、とりわけ障がい者や高齢者等、社会的弱者
- 株主や出資者
ビジネスモデル・キャンバスでは、主要なリソース(Key Resources)及び顧客との関係(Customer Relationship)が該当しますね。
人を幸せにするということは、
会社・組織が「人を磨く場」であるということであり、
さらに、
顧客やパートナーを幸せにするということは、
「自立型感動人間の育成(スーパーホテル)」であったり、
「人に尽くし、己を磨き、ともに伸びる(新潟の旅館業“いせん”)」というクレドを浸透させたり、
「良い品、良い人、良い会社づくり」を信条としたり……。
非常に手間暇と時間をかけて行わなければ、なかなか確立されないものです。
言ってみれば、中途半端なままのKRや、シンプルなCRの仕組みではすぐに真似されたり追いつかれたりしてしまうわけです。
まさに、他社には真似できないKRを蓄積させブランド化し、
パートナー(KR)から絶大な信頼を得て一心同体で価値(VP)を創造し、
そして顧客に最高の価値を届け続ける(CH)ために、
現在の顧客(CS)をHappyにしながら、
未来の顧客(CS)をHappyにできる新たな価値創造(VP)を可能にできるリソース(KR)を進化・深耕していく活動こそ、年輪経営のビジネスモデルの「型(アーキタイプ)」と定義できるでしょう。
実は、世界で創業200年以上の企業は約5,000社あり、このうちの3,000社強が日本に集中しています(2)
日本の老舗企業の特色は、世界最古の企業トップ3や10世紀以前の企業が結構な数あることだそうです。
KRとCRを時間をかけて蓄積し、進化・深耕してきたものだと容易に想像がつきます。
一見すると、手間暇と時間をかけることは、近年のデジタル化やスケール重視の事業構築・投資判断からは逆行していると捉えられてしまうかもしれません。
しかしながら、「良い会社サーベイ」によれば「好業績=人にやさしい」が成り立ち、人財育成や地域との関わり合い、社会的弱者雇用、等々に時間をかけている会社が、好業績であり社員満足度、経営への理解度が高いのです。
更には、米国的資本主義を追っている中国、そしてアジアの経営者が「社員を幸せにする会社」に並々ならぬ興味関心を示しています(1)
売上や利益率を追うという株式資本主義社会は、今、岐路に立たされているのかもしれません。
少々こじ付けですが、人を大切にする組織やビジネスには、一過性の売上・利益よりも、持続的に長期的に収益をいただく=サブスクリプション・モデルの方が適しているのかもしれませんね。
(1)詳細は「理想の会社をつくるたった7つの方法(あさ出版)」に記載あり
(2)https://www.sankeibiz.jp/business/news/180808/bsg1808080500001-n1.htm
(代表理事 山本 伸)