暗黙知の形式知化
みなさん、こんにちは、理事の岡田明穂 in Osakaです。
先日、画像のイメージ図をまとめてみました。手前みそながら、腑に落ち感が高いです。まあ私は描き手本人ですから、当然と言えば当然なのですが^^;
●「経営デザインシート」は、企業が今後どの様に進化していくかのストーリーを、「価値創造メカニズム」(ビジネスモデルキャンバスにおけるビジネスモデルとほぼ同義ととらえていいでしょう)の変革という観点から語るための、「ストーリーボード」
●「ビジネスモデルキャンバス」(バリュープロポジションキャンバス含む)は、「ストーリーボード」に組み込む、各個別シーンの「構造設計図」
●その各個別シーンにつながる「着想や社会に対する問題提起(意識)」を内省し、かつ外化しより深める手段としての「PhilosophyやArt」(BMIAでも部ができるほど愛好家が多いLEGOなんかも、ここに位置するかと)
スライドで軸とした「暗黙知−形式知」は多くの方がお気づきだと思いますが、知識創造理論におけるSECIモデルから転用させていただいたものです(そういう意味では、本来はループ状なのですが)。
実は、この「暗黙知−形式知」の裏には、もうひとつの軸が機能しています。
それは、「主観−客観」の軸です。
スライド内で、私が偉そうにふんぞりかえりながら言っていること、「未来への進化ストーリーは、主観たる暗黙知が、相互主観を経て、客観的形式知へと至るプロセス」という軸です。
ここで留意すべきことは、この「主観」のとらえ方です。
どうも私たち現代人は、ともすると、主観を客観とは明確に区別する(デカルトの)二元論的にとらえる傾向が強いようですが、ここでいう「主観」とは、それとは異なり、フッサールの現象学的還元論に基づく「主観」です。
「なんじゃそりゃ?」と思われるかもしれませんね(笑)。
二元論における「主観」を最もわかりやすく表現しているのは、有名な「我思う、故に我あり」でしょう。そこには自分を自分以外の他者・外界とは明確に区別する「自己vs他」のスタンスがあります。
一方、現象学的還元論においては、「他者・外界をこう思っている(感じている)自分がいる、それこそが主観」だととらえます。「世界の中の自己」というスタンスが強いと言っていいでしょう。
「自己対他」−「世界の中の自己」、対象的であり、近年どっちの必要性が話題になることが多いでしょうか?
おっと、それこそ二元論的にとらえるのはやめましょう(笑)
まあ、私は哲学が専門家ではないので、厳密にはちょっと違うのかもしれませんが、そこは誤差としてお許しください。
要は、自分本位の主観とは全く異質なものとして、ここでの「主観」をとらえる必要があるということですね。
ここらあたりのことは、先日配信されたBMIAイノベーターズレポートで筆者の國井理事が、「イノベーションに必要な主観力は、共感により自分の中に映り込んだ他者との対話により生まれる」との紺野登先生の言を紹介していますので、ぜひご参照ください。
http://bmia.bmeurl.co/8935B84
で、ここからが大切なところなんですが…
この主観が本質的なものかどうか見極める、あるいは本質的なものとしていくためには、自分が確信する「主観」が、誰にとってもの確信となる必要があります。
そこに「主観」と「主観」がぶつかりあい、そして、それを弁証法的に統合していく「対話(ダイアローグ)」の意義が生じてきます。
そういったプロセスを通じて、「主観」は共感の輪の中で「相互主観」となり、そして「誰にとっても」、少なくとも「多く」の絶対的な疑えなさ、すなわち確信となったとき、「主観」は「客観」となります。
いかがでしょうか?
法則的なものを演繹的にあてはめることで客観性を得ようとするアプローチ(源は二元論?)とは、全く異なると思いませんか?
今、イノベーションに必要とされているのは、この「主観が相互主観を経て、客観に至る」アプローチです。だからこそ、そのビジネスに、多くの人の「当事者意識からのアツい思い」がこもる。これは、精緻な市場分析・戦略法則の演繹的適用アプローチには、なかなかに期待し難い効果でしょう。
ポイントとなるのは、「対話」の輪、言い換えれば「相互主観−共感の輪」を広げること、そのためには、複数の人の間で「主観」を共有し合うための「形式知化ツール」が必要になります。
そしてそれらツールは、「輪」の広がりに応じて、あるいは、共有シーン毎に、それに適したツールであることが望ましいであろうということは、容易に推測できます。
そう、それらが、経営デザインシートであり、ビジネスモデルキャンバスであり、LEGOや哲学、アートなわけです。
いやあ、深いです!
いつもにも増して難解な? 大長文となってしまいました。
ここまで読んでくださったみなさんには、大感謝です。
それでは!
*「構想力の方法論」(紺野登先生・野中郁次郎先生)では、ここらのことをより深く学ぶことができます。もし未読の方がいらっしゃったら、紐解かれることを強くオススメします
日経BP社 (2018/7/21)
昨年11月に著者(紺野登先生)にお越しいただいて、読書会を開催しました。
ふだんなら
「もし著者がここにいたら、どんなことを質問したい?」
と想定するところ、この日は本当に直接、
著者に質問できた、というすばらしい機会でした。
このもようは、BMIA発行のQuarterly Report vol8に掲載しております。